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高知地方裁判所 昭和34年(行)10号 判決

原告 横田慧 外五三名

被告 高知県教育委員会

主文

被告が原告らに対し昭和三四年九月三〇日なした解職処分はいずれもこれを取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告ら訴訟代理人は「被告が原告らに対し昭和三四年九月三〇日なした解職処分は無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決及び、予備的に「被告が原告らに対し昭和三四年九月三〇日なした解職処分は取り消す。」との判決を求め、その請求原因として

一、別紙当事者目録第一記載の原告ら(以下単に「第一の原告ら」という)は昭和三四年四月一日被告から高知県立学校教員として、同目録第二記載の原告ら(以下単に「第二の原告ら」という)は同日被告から高知県の市町村立学校教員としてそれぞれ条件附で採用され、爾来同目録所属学校欄記載の各学校に勤務していたところ、右第一、第二の各原告ら(以下単に「原告ら」という)は同年九月三〇日被告から原告ら所属の右各学校長より原告らにかかる勤務成績の評定書(以下単に「条件評定書」という)が提出されなかつたので原告らが条件附採用期間中良好な成績でその職務を遂行したとの認定ができなかつたとの理由で解職処分を受けた。

二、しかし、右処分はいずれも次のような明白にしてかつ重大なかしがあるから無効である。

(一)  右処分は法律上条例上の根拠を欠く無効のものである。

すなわち、地方公務員法(以下単に「地公法」という)第二二条第一項によれば条件附採用期間中の職員(以下単に、「条件附職員」という)は、条件附採用期間中「その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする」とあるが、右にいう「良好な成績」とは通常の成績を意味し、その期間中の職務の遂行に教員としての適格を否定せしめるような何等かのかしがなければ期間満了とともに、当然に正式採用になるものと考えるべきである。したがつて、期間満了の際にあらためて正式採用にする旨の意思表示を必要としない、又従来被告は別段の意思表示をしていない。

つまり条件附採用は、解除条件附採用と解するのが正当である。

しからば、いかなる場合にその条件が成就するかといえば同法第二八条第五項の規定に基く条例によつて、条件附職員の分限免職に関する規定を設け、その規定に基いて勤務成績が不良な場合に免職処分を行つた場合であると考える。

しかるに高知県では同条項に基づく条例上の定めを欠き、他に条件附職員に対し免職処分を行い得る旨の定めは皆無であるので、結局被告は何等の法的根拠なくして本件処分を行つたことに帰する。これは法律による行政――法治主義の原則――に反するものであつて明らかに無効である。

(二)  右処分は、原告らの勤務成績不良を理由とするものでないから無効である。

すなわち、被告は、本件解職処分の理由として原告ら所属の各学校長から原告らにかかる条件評定書が提出されなかつたので勤務成績を判定する重要な資料がないため正式採用ができない旨主張している。しかし、条件附職員は、前記のとおりその期間中の勤務成績が不良であることが明らかにされ、それを理由に免職されないかぎりは期間満了と同時に当然に正式採用になると解すべきである。

しかるに、右処分は、原告らの勤務成績不良を理由とするものでないから無効である。

(三)  右処分は、処分権(解雇権)の濫用であつて無効である。

すなわち、被告は本件解職処分の理由として原告ら所属の各学校長から原告らにかかる条件評定書が提出されなかつたので勤務成績を判定する重要な資料がないため正式採用ができない旨主張している。被告が条件評定書に拘泥するのは、高知県において各学校長から勤務評定制度につき激しい抵抗を受け、その提出を得られないでいるところから、不提出の校長に圧迫を加えようとする政治的な一連の措置につながつているからである。

しかし、原告ら所属の各学校長から原告らにかかる条件評定書が提出されなかつたことは、原告らの責任ではない。それはむしろ行政権内部の問題であつてそのことのために何等関係のない原告らが不利益な取扱を受けなければならない謂れはないのであるから、被告主張の如き理由に基づく解職処分は公平の原則に反するは勿論、これは処分権の濫用であつて無効である。

三、よつて、原告らは、被告が原告らに対してなした解職処分の無効確認を求め、かりに無効でないとしても、右のかしがあるからその取消を求める。

と述べ、

立証として、甲第一号証を提出した。

被告訴訟代理人は「原告らの請求を棄却する。」との判決を求め、答弁として、

原告ら主張の請求原因一の事実は認める。同二の(一)の事実中被告が従来条件附職員の正式採用手続につき期間満了の際あらためて正式採用にする旨の意思表示をしていなかつたこと、高知県には地公法第二八条第五項に基づく条例のないことは認めるが、その余の主張事実は争う、(二)(三)の事実中原告らを解職処分に付した理由が原告らの所属学校長から条件評定書の提出がなかつたため原告らの勤務成績が判定できず、したがつて正式採用できなかつたためであることは認めるが、その余の主張事実は争う。

被告は、次の理由により原告らを解職処分に付したものである。

一、地公法第二二条第一項は「臨時的任用又は非常勤職員の任用の場合を除き、職員の採用は、すべて条件附のものとし、その職員がその職において六月を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする。」と規定している。この条件附採用の制度は、地方公務員として新たに採用される者が果してその職務の遂行能力を有しているか否かを一定期間の勤務成績の実証に基いて判断し正式採用するか否かを決せしめようとするにある。

そこで、同法は条件附職員に対しては正式採用職員(以下単に「正式職員」という)の身分保障に関する規定の適用を排除している。すなわち、

(一)  同法第二八条第四項は正式職員の分限に関する第二七条第二項第二八条第一ないし第三項の規定を条件附職員には適用しない旨規定していること、

(二)  同法第二八条第五項は条件附職員の分限については条例で必要な事項を定めることができる旨規定しているが、同条第三項との比較においても明らかなように条例を制定するや否やは自由(任意的)であること、

(三)  同法第四九条第五項は条件附職員に対しては不利益処分に関する審査請求についての同条第一ないし第四項の規定を適用しない旨規定していること、

などの各規定の趣旨からすると、条件附職員は正式職員と比較し分限上殆んど身分保障がなく、したがつて条件附職員は、勤務成績がよい場合でも、心身の故障がなく、職務の遂行に支障がなく、又これに堪えうる場合でも、或は職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じない場合でも、任命権者としては同法第六条により自由裁量をもつて事情によつては条件附職員の免職等の不利益な処分を行いうるものである。

二、同法第一五条は「職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、勤務成績その他の能力の実証に基いて行わなければならない。」と規定し、第四〇条第一項は「任命権者は職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。」と規定している。

(一)  県立学校職員の勤務成績の評定

被告は、右規定に基き高知県立学校職員の勤務成績の評定に関する規程(昭和三三年六月一三日高知県教育委員会訓令第三号、同三四年八月一五日改正同訓令第一号)を制定し、その第四条第三項は「条件評定は、条件附採用期間中の職員について、その勤務実績が九〇日に満ちた後において、県教育長が指示する日に行う。」と定め、第七条は職員(校長、校長職務代理者を除く)の評定者は職員の所属する学校の校長又は校長職務代理者とし、さらに同第一一条には「この規程に定めるもののほか、勤務評定の実施について必要な事項は、県教育長が定める。」と定めた。そこで県教育長は、右規定に基いて必要な実施事項について詳細な定めをなし、次いで第一の原告らについての条件評定の実施につきその実施期日を昭和三四年九月一日と定め同年八月二八日その所属の学校長に対し条件評定書の提出を命じたが、右原告ら所属の学校長は、右法規命令等を無視し右原告らの条件評定書を提出しなかつたため、結局被告としては右原告らが条件附採用期間中良好な成績で職務を遂行したものであるとの認定ができなかつた。

(二)  市町村立学校職員(県費負担教職員)の勤務成績の評定

地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下単に「地方教育行政法」という)第四六条は「県費負担教職員の勤務成績の評定は、地方公務員法第四〇条第一項の規定にかかわらず、都道府県委員会の計画の下に、市町村委員会が行うものとする。」と規定している。被告は右規定に基き県費負担教職員の勤務成績の評定に関する規則(昭和三三年六月一三日高知県教育委員会規則第六号、同三四年八月二一日改正同規則第六号)を制定し、その第四条第三項第七条第一一条には前記高知県立学校職員の勤務成績の評定に関する規程第四条第三項第七条第一一条と同一の規定がある。そこで県教育長は、右規定に基いて必要な実施事項について詳細な定めをなし次いで第二の原告らについての条件評定の実施につきその実施期日を昭和三四年九月一日と定め同年八月二八日関係者に指示し、市町村教育委員会は被告の右計画に基き右原告ら所属の各学校長に対し条件評定書の提出を命じたが、右原告ら所属の学校長は右法規命令等を無視し右原告らの条件評定書を市町村教育委員会に提出しなかつたため、被告としては右評定の結果に接することができず、結局右原告らが条件附採用期間中良好な成績で職務を遂行したものであるとの認定ができなかつた。

三、被告としては、前記法律規程等の趣旨よりして、又人事行政の制度上、右法律規程等に従つてなされたところの条件評定の結果を法定の重要不可欠な資料として、条件附採用期間中の原告らを正式採用するや否やを決すべきであることはいうまでもない。

しかるに原告らの任命権者たる被告は、右理由により原告らの条件評定の結果の報告に接することができず、したがつて原告らが良好な成績で職務を遂行したとの認定ができなかつたたため、原告らの正式採用ができず、やむなく解職処分に付したものである。

以上のとおり被告のなした本件解職処分は、任命権者の有する自由裁量の範囲に属するものであつて適法である。

かりに、被告のなした本件解職処分に何等かのかしが存するとしても、原告らは条件附職員であるから地公法第四九条第五項によつて前記不利益処分に対する審査の請求をなす権利を有しない者である。したがつて、原告らは本件解職処分の違法を主張してその取消の裁判を求める権利を有していない。

よつて、以上いずれの点よりするも原告らの請求はすべて失当である。

と述べ、甲第一号証の成立は不知と述べた。

理由

一、第一の原告らは昭和三四年四月一日被告から高知県立学校教員として、第二の原告らは同日被告から高知県の市町村立学校教員としてそれぞれ条件附で採用され、爾来別紙当事者目録所属学校欄記載の学校に勤務していたところ、右条件附採用期間の最終日にあたる同年九月三〇日、被告が原告らに対し原告ら所属の各学校長から原告らにかゝる条件評定書が提出されなかつたので同人らが条件附採用期間中良好な成績でその職務を遂行したとの認定ができなかつたとの理由で解職処分をしたことは当事者間に争いがない。

二、そこで右理由に基く右解職処分が適法であるかどうかについて以下順次検討する。

(一)  条件附採用制度の趣旨・目的

公務員の一般職員の条件附採用制度は、公務員として採用せられるべき者はその官職における職務を遂行する適格者であることを要するのはいうまでもないところであるが、競争試験又は選考を経て公務員として新に採用せられる者が必ずしも職務遂行能力を有するとは保障し難いのでその能力の有無を判定して職員として採用するか否かをきめようとする職員の選択手続の最終段階の選択方法として採られている制度であつて、職員の採用は条件附のものとし、その職において六月を勤務し、その間良好な成績で職務を遂行したときに適格性を有するものとして正式採用となり、成績不良その他適格性のないものはその職より排除せられるものとするのである。要するに条件附採用制度は、その本質が選択過程の一部であり、不適格者の官職からの排除を容易ならしめることを目的とするものである。

(二)  条件附職員の地位

地公法第二二条第一項は「臨時的任用又は非常勤職員の任用の場合を除き、職員の採用は、すべて条件附のものとし、その職員がその職において六月を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする。」と規定している。右規定は、前記のとおり職員の選択手続の最終段階の選択方法を規定しているものであるが、条件附採用制度の趣旨からして最終段階たる六月を良好な成績で職務を遂行したときにはあらためて特別の手続を要せず期間終了の翌日において当然正式採用となるものと解するのが相当である(右と同旨の条件附採用制度を認めた国家公務員法に基く人事院規則八―一二(職員の任免)第二六条第二項の規定もこれに合致し、又被告のこの点に関する従来の取扱いも同様であることは当事者間に争いがない)。

地公法は、条件附職員の分限につき第二七条第一項の分限が公正でなければならないとする規定を除き、正式職員の分限上の身分保障たる同条第二項第二八条第一ないし第三項の規定の適用を排除し(同法第二八条第四項)、正式職員の不利益処分に関する審査の請求についての規定の適用を排除している(同法第四九条第五項)。これは条件附職員が前記のとおり選択過程にある者で未だ正式職員としての適格性は認められておらず、その中には公務員としての適格性を有する者があるとともに適格性を欠く者もあり得ることは当然予想せられるいわば暫定的地位にある職員であるから正式職員に与えられる身分保障を排除し任命権者に広範囲の自由裁量権を認めたものである。

たゞ同法第二八条第五項は条件附職員の「分限については、条例で必要な事項を定めることができる。」と規定しているので、これに基く条例が制定されるときは条例の内容により条件附職員の身分についてその保障の基準が生じ得るわけである。しかし条例を制定すると否とは右条文自体からも明らかなように任意的なものであるが、右説明のとおり法律上の身分保障のないことの趣旨に照し条例がないからといつて解職処分をなし得ないものと解すべきでないことは勿論である。従つて高知県に条例は制定されていないからといつて原告らの解職処分が違法であるとはいえない。

しかし、条件附職員といえども既に一定の競争試験もしくは選考を経て採用され正式職員となることを期待し得べき地位にあり、地公法第二二条第一項が条件附採用期間を制限しているのも条件附職員の地位をいたずらに不安定におかない趣旨に出たものであり、一方条件附採用制度が不適格者の排除を目的とするにある以上任命権者の解職等の処分にも自から合理的範囲の制約の存することは当然である。このことは条件附職員の分限が公正でなければならないとする前記地公法第二七条第一項の規定からも窺えるところである。

(三)  本件処分の適否

被告は、地公法第一五条第四〇条第一項(県費負担教職員については地方教育行政法第四六条)に基き

(1)  第一の原告らについて、高知県立学校職員の勤務成績の評定に関する規程に則り県教育長が同原告ら所属の学校長に対し同原告らの条件評定書の提出を命じ、

(2)  第二の原告らについて、県費負担教職員の勤務成績の評定に関する規則に則り市町村教育委員会が県教育長の計画の下に同原告ら所属の学校長に対し同原告らの条件評定書の提出を命じ

たが右各学校長は右法規命令等を無視し原告らの条件評定書を提出しなかつたため、被告としては原告らが条件附採用期間中良好な成績でその職務を遂行したとの認定ができず、したがつて原告らの正式採用ができず、やむなく解職処分に付した旨主張するので考えてみる。

職員の任用の際の勤務成績その他に関する能力実証主義については地公法第一五条に根本的規定があり、さらに同法第四〇条第一項に職員の勤務成績について任命権者は定期的にその評定を行いその結果に応じた措置をとらねばならない旨規定しこれを任命権者に義務づけているところである(県費負担教職員の勤務成績の評定については、職務上の命令を発しその服務の監督を行うものは市町村教育委員会であるところから、地方教育行政法第四六条は評定は同委員会において行い都道府県教育委員会はこれが計画に当るものとした)。地公法第二二条第一項に基く条件附採用期間の勤務成績も一応同法第四〇条(地方教育行政法第四六条)による評定の対象となるものと解さねばならない。そこで被告は右各規定に基き、県立学校職員については高知県立学校職員の勤務成績の評定に関する規程(昭和三三年六月一三日高知県教育委員会訓令第三号同三四年八月一五日改正同委員会訓令第一号)を、市町村立学校教職員については県費負担教職員の勤務成績の評定に関する規則(昭和三三年六月一三日高知県教育委員会規則第六号同三四年八月二一日改正同委員会規則第六号)をそれぞれ制定しているが、その各第二条第七条第一一条には、勤務成績の評定を人事管理の基礎資料の一とすること、職員(校長、校長職務代理者を除く)の勤務成績の評定者をその職員の所属する学校の学校長又はその職務代理者とすること、勤務評定の実施について必要な事項は県教育長が定めること等の定めがある。

ところで原告ら所属の各学校長が右各規定並びにこれに基く職務命令を無視し原告らの条件評定書を提出しなかつたことは被告において評定書に基く評定をなし得ない結果となるが、右は行政機関自体の責に帰すべき機関内部の問題であつてもとより原告らの責に帰すべき事由によるものではない。

他方被告は地公法第二二条第一項に基き条件附職員につき所定の期間内の勤務成績を評定し適当の措置をなすべきこともその義務に属するものといわねばならない。

なるほど地公法第四〇条(地方教育行政法第四六条)による勤務成績の評定は、前記のように同法第一五条による任命についてはもとより、人事管理一般の資料となる重要な制度であり、これが実施にうつされ評定書の提出がなされている場合にこれを無視しこれ以外の方法により勤務成績の評定をなすことは許されないというべきであるが前記のような事由により評定書の提出がなされない以上、任命権者において限定された期間に相当の措置をなすべく義務づけられた条件附職員に対する勤務成績の評定は適当な方法によりこれをなすべきことはむしろ当然の措置というべきである。

以上のように被告主張のような理由に基く解職処分は、条件附職員の適格性の判定がなされないまゝこれを排除することゝなり、かつ条件附職員の地位をいたずらに不安定におくもので公務員としての適格性の存否を一定期間内に適正に判定し適格性のない者を排除しようとする条件附採用制度の趣旨・目的に反し、又任命権者としてなすべき条件附職員に対する勤務成績の評定義務をつくさず行政機関内部における事務の執行のそごによる不利益を他に何らの事由もなく条件附職員に帰せしめることとなり条理にも反し、任命権者の有する自由裁量権の合理的範囲を逸脱し違法の処分という外はない。

しかしながら、自由裁量権の範囲を逸脱した右程度のかしは、明白にしてかつ重大なかしということはできないから本件解職処分を無効ならしめる原因とするに足りず、したがつて本件解職処分が無効であるとの原告らの請求は理由がないが、その取消を求める予備的請求は理由があり、かつ本訴は行政事件訴訟特例法の出訴期間内に提起されたものであることが本件記録に徴し明白であるから被告のなした右処分はこれを取り消すべきものとする。

三、なお被告は、原告らは条件附職員であつて地公法第四九条第五項により不利益処分に関する審査の請求をなす権利を有しないから、本件処分に違法があるとしてもその取消の裁判を求める権利を有しない旨主張する。

地公法は、地方公務員に対する分限及び懲戒における基準を定めたが、さらにこれを一層保障するためこれに対応する事後審査の制度として不利益処分に関する審査の請求をなす権利を認めたものである。条件附職員に対しては前記のとおり正式職員についての分限事由の規定の適用を排除した結果これに対応する不利益処分に関する審査の請求をなす権利についての適用も排除したものである(同法第四九条第五項)。

従つて条件附職員は不利益処分に関する審査の請求をなす権利を有しないが、これがため条件附職員は任命権者のなした違法な処分について裁判を受ける権利を奪われるものでないことは勿論である。

四、結論

以上のとおり被告が原告らに対してなした解職処分は違法であつてその取消を免れないものである。よつて原告らの予備的請求は理由があるから正当としてこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 合田得太郎 隅田誠一 山口茂一)

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